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絵本を読み終え、魔界にある家に帰ってくると、玄関の傘立てに入れていた白い日傘が不機嫌そうに出迎えてくれた。
「人間の世界のお茶会にいく予定なんてなかったのに……わたしもつれてってくださいよ」
日傘からは、少女の声。魔界にある物が話したりする現象は、よくあること。
「白い兎の正体がわかったの、明日には猫に会える可能性が少しあるわよ」
答えにはなっていないが、無視をすると道具の心ははすさむので、一言返した。
翌日、植物学者は愛用の白い日傘を金髪の人間の姿に変える。
声に見あった少女の姿だが、植物学者の持っている服を着せるとぶかぶか。仕方なく服を脱がせて、その体に白いシーツを体に巻き付けた。
「裸は……まずいわね、アリスではなく人間でいう娼婦になってしまうわ」
「しょう……なんですか?」
「忘れて」
即答。だが、なおも可愛らしく横に傾けた少女の頭を撫でた。
「お洋服を買いにいきましょうか」
少女の頭を撫でた手で、植物学者は額を押さえた。多少変わってはいるが、腕は確かな魔界唯一の服屋なので、とにかく仕方がない。
「わたしは、この姿で?」
「そうなるわね」
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