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魔界は、一日中紫色の空をしていて、昼間は魔界の者達がすごすには快適で、夜はそこに、人間に流れる血液のように赤い月が浮かび上がる。
実は、彼女が日傘をさす必要はあまりない。
仕方なく植物学者の服を着せた少女の手を引いて、ランプに火をともして歩く理由は、下級の悪魔に絡まれないようにするためだが、中級以上への効果はない。
「ゆりゆりでもしますか?」
すれ違った顔見知りの紳士風悪魔からの魔界ジョーク(?)には、
「あなたと同じ性別ならバラバラですわね」
魔界ジョークで返し。
「フィカさんの植物図鑑、楽しみにしていますから、」
お使いの帰りらしい植物図鑑読者のエルフの(見た目)少年には、
「あら。ありがとう」
上品に笑いかける。
「あの、その子は?」
「日傘よ、服がなくてね」
植物学者、フィカの後ろに隠れていた少女は、ちらと少年をみた。
「そうなんですか……あの、ご冥福……間違えた」
少年と植物学者の顔に、さっと影がさすが、日傘少女はその意味がよくわからず、首をかしげた。
「気づかいは受けとるわ」
エルフと別れて、森のようなところや、マグマにかけられた何故かプラスチックでできている橋を通ったり、下級の悪魔が悪のりで作ったブロックの上を(道の途中においてある)歩いたり。
とにかく、道は、魔界にいる様々な者の気分で、様々に整備されている。人間が歩けない程度に。
「疲れてない?」
少女のことを考えて、時々休憩をとる。なれない姿で動きずらい格好だから、疲れても仕方のないことなのだが……
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