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なにかを察していたかのように、玄関の扉には仕立て屋の男がいた。ほどよく筋肉がつき、長身で、無駄に美形なのは、彼が色欲の悪魔だからかとおもわれる。
植物学者はため息をついてから少女を降ろす。問題は、彼の服装である。
「レェディ、重苦しいため息は無しとしようじゃないか」
それに気づいた彼は、大袈裟に肩をすくめ、近づいてきた。レディの言い方も、気取っている。
「ひっ」
日傘の少女は、植物学者の後ろに隠れた。
「……ごきげんよう。仕事を持ってきたわ」
無表情の植物学者に、仕立て屋はお互いの鼻がふれあいそうな程度に顔を近付けた。
「立ち話も悪い、早くあがらないかい?」
体からの香水独特の甘ったるい香りを体験する植物学者は、
「……」
返事の代わりに頭突き。
「oh!」
「客へのセクハラで営業停止にできるかしら。法律機関ないけど」
痛がる仕立て屋を見る植物学者の表情はにこやか。
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