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そんなこんなで、タタミと言う緑色の床の部屋に通された。
仕立て屋の服装は、ふんどしというもので、和の心だそう。服装と言えるのか。
「この子の服を作ってほしいのよ。こういうデザインでね」
丸い机(ちゃぶ台)の上に、植物学者はスケッチブックを広げた。
「色は、これでいいの?」
スケッチブックに描かれたものを真剣に見つめる仕立て屋と、
「そこら辺は適当にお願い、すぐ作ってね。ほら、あなたからもなにか言いなさい」
「えっと……おねがいします」
「任された」
仕立て屋はスケッチブックを持って立ち上がると、やけにぎこちなく歩く。
「ちょっとその、足がしびれて……」
ここで植物学者は、半ば押し掛けるような形で来たと言うことを今さら思い出した、
「悪いわね。いきなり来てしまって」
「客なんて、いきなりくるものさ」
仕事には、それなりの情熱を持っているようだ。ただ、いまいち格好がつかないことに植物学者は首をかしげたが、彼は部屋から出ていった。
「そうか、あの紐パンツ……違うわね、Tバックでもないし……奇妙な格好だからよ」
「良いんですか、あんな格好で」
少女の問いには答えずに、植物学者はみかんに似た紺色の果物の皮をむき、白いすじをとり、口にいれる。
「時期じゃないから、すっぱいわね。食べてみる? はい、あーん」
紺色ミカンを少女の口の近くに持っていくと、素直に口を開けて、食べてくれた。
「これ、すっぱいですね」
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