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しばらくして、勢いよく襖が開き、仕立て屋が戻ってきた。手には水色のワンピースと白いソックス、それと下着。
「あい出来た」
意気揚々。爽やかな笑顔で少女にそれを渡す。
「少女よ、試着室は廊下を出て赤いふすまのところだ……それ以外のふすまはスタッフオンルィーだ」
「はい」
服を受け取った少女が部屋から出て、ふすまがとんと閉まり、仕立て屋と植物学者の二人だけになった。
「なんの種類かわからなかったけど、いただいたわよ」
仕立て屋は植物学者の隣に足のしびれにくいあぐらをかく。
「それを名付けるのがフィカの仕事だろう……あのデザインはアリスか? どういったつもりで?」
「白兎を見たからね、そいつで遊んだら喜ぶと思って……最後はなべるけど」
「なべるって……」
意味がわからなかったのか、腕を組んで顔をしかめる仕立て屋をみた植物学者は上機嫌になり、笑みを浮かべた。
「鍋にして食うって意味よ、とっさに思い付いてね」
「……その笑顔、なんと輝くことか」
ため息の混ざった言い方、仕立て屋は呆れた。
「報酬はどうしましょう」
「お前……の服で良い。少女の着ていた方」
「感謝するわ。ところで、あなたの身に付けているものはなんと言うの?」
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