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しばらく口を閉ざしていると雅も黙ってくれていた。整理の時間を与えてくれているのだろう。
相変わらず拓人の顔は見れない。
彼は今、何を考えているのだろう。
波奈は雅の目を再び見た。
知るべき事がまだ山のようにある。
「私の力を利用していた……"奴ら"って何?」
その質問を待っていたと言わんばかりに雅は頷いた。核心に近づいているよう。
「それを話す前に……波奈は"吸血鬼"についてどう思っていた?拓人くんと出会うまで。」
「吸血鬼について……?」
少し話題から外れた質問に波奈は驚いていたが、うーんと唸りながら答える。
「あまり考えた事はなかったけど……
そういうものは伝説だと思ってた。実在しないだろうって。でも……吸血鬼という言葉を聞いた時、私の心は騒いだ。
何かが眠りから覚めるような、そんな感覚に陥っていたの。」
「そうね。騒いだ理由は自分の過去と出生に関わる封じられていた記憶が戻る前兆だったのよ。
吸血鬼という言葉は……貴方の身近にあるものだから。」
身近にあるものとはどういう事だろう。
昨日まで波奈と吸血鬼は無縁だったはずだが。
「……この世に俺達みたいなものはごまんといる。」
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