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雅は真っ直ぐ波奈の目を見た。
切れのある瞳で見つめられると思わず萎縮してしまう。体が上手く動かないため、波奈は雅の方に顔を向ける事しかできない。
「えっと……まず何から説明したらいい?」
「私の……私の欠けていた記憶は……」
「拓人くんに衝撃を貰って、少しは思い出したはずよ。……信じられないかもしれないけど。」
初めて拓人に首筋を噛まれてフラッシュバックしたのは、親の事故現場から連れていかれる幼き自分。
そして昨日いた場所で自分が囚人のような人を殺していく姿。
直接手を下したわけではない。
波奈がしたのは……声を上げた。
それだけ。
ふと喉元に触れる。
別に何も違和感はない。
それを見ていた雅は彼女が何を知りたいのか想像がついて口を開ける。
「波奈、貴方の声……
声帯にはある力が眠っているの。」
「ちから……?」
「"D-Voice"。」
拓人が呟くように言った。
まるで意味が分からない。
「ディー……ボイス?」
カタコトのように反復する波奈に雅はさらに説明する。
「Destruction-Voice。私達はD-Voiceと呼んでいる。訳すと"破壊の声"。
貴方の声は……一定の衝撃を与え続けられると莫大な破壊力を持つ。
洗脳して無理に引き出せる事も可能。
この力は、貴方しか持たないもの。」
「ちょ、ちょっと待って!」
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