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彼女が何を言っているのかさっぱり分からない。
声帯が異常?破壊力を持つ声?
ファンタジーの中にありそうな設定。
その力を私が持っている?
ただ一人、私が。
とんでもない。昨日まで私はごく普通のどこにでもいそうな女子高生だったはず。勉強したり遊んだりお喋りしたり、ありふれた生活をしていたはず。
昨日の放課後までは。
「理解できないでしょう。でも貴方は見たはずよ。記憶を戻した時に自分が何をしてきたのか。」
冷たい口調で言うのは現実だと理解させるため。
現実だと心の中では気づいていたかもしれない。殺した後に砂の臭いと喉の異様な渇きを体で感じていたから。
まるで波奈が殺したという事を分からせるために。
体が身震いした。寒いからじゃない。
「奴らは貴方のその能力を使って、拓人くん達の同類を殺していたの。貴方の力を機械で操って無理矢理目覚めさせて、破壊行為を繰り返していた。」
「同類……。」
吸血鬼の事だろう。
拓人は相変わらず外を見ている。
「何故私が……吸血鬼を殺す道具に……」
「吸血鬼だけじゃない。貴方の力は人間も殺せるのよ。今回は吸血鬼を殺す事に使われただけ。」
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