宣言-Proclamation-

7/31
前へ
/512ページ
次へ
彼女が何を言っているのかさっぱり分からない。 声帯が異常?破壊力を持つ声? ファンタジーの中にありそうな設定。 その力を私が持っている? ただ一人、私が。 とんでもない。昨日まで私はごく普通のどこにでもいそうな女子高生だったはず。勉強したり遊んだりお喋りしたり、ありふれた生活をしていたはず。 昨日の放課後までは。 「理解できないでしょう。でも貴方は見たはずよ。記憶を戻した時に自分が何をしてきたのか。」 冷たい口調で言うのは現実だと理解させるため。 現実だと心の中では気づいていたかもしれない。殺した後に砂の臭いと喉の異様な渇きを体で感じていたから。 まるで波奈が殺したという事を分からせるために。 体が身震いした。寒いからじゃない。 「奴らは貴方のその能力を使って、拓人くん達の同類を殺していたの。貴方の力を機械で操って無理矢理目覚めさせて、破壊行為を繰り返していた。」 「同類……。」 吸血鬼の事だろう。 拓人は相変わらず外を見ている。 「何故私が……吸血鬼を殺す道具に……」 「吸血鬼だけじゃない。貴方の力は人間も殺せるのよ。今回は吸血鬼を殺す事に使われただけ。」
/512ページ

最初のコメントを投稿しよう!

300人が本棚に入れています
本棚に追加