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雅の言葉は「貴方は戦争用の道具になる」と言っているようなものだった。少なくとも波奈にはそう感じた。
「奴らは吸血鬼が貴方の力を利用する前に貴方を洗脳したの。貴方の身分や経歴、過去の全ての記憶を消してね……。
そして都合の良い武器としてこれまで育ててきた。全ては吸血鬼をこの世から消すために。」
彼女の言葉に現実味はなかった。
そんなおとぎ話など普通の人は信じない。
しかし、現実離れした経験を波奈は既にした。
だから嫌でも信じるしかない。
自分の体には、正確には声帯には……
人間が持たない能力が秘められている。
破壊の声、D-Voice。
これによって拓人の仲間を……殺した。
息苦しくなる。
彼の事を考えると、自分のやってきた行いに対する罪悪感がのし掛かってくる。
何も知らずに朝を迎えて感じた罪悪感とは比べ物にならない。
拓人の気持ちが知りたい。どうしようもなく……。
これも拓人と血を交わせた契約の影響なのだろうか。
波奈にはまだ分からない。
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