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沈黙を保っていた拓人が口を開き、波奈に視線を合わせる。漆黒の瞳が見つめてきて、思わず目を逸らしてしまった。
彼は話し始める。
「俺達はこうやって人間のように生活している。その方が不自由なく暮らせるからな。人に馴染めば普通でいられる。俺達は元々人間をどうこうしようなんて思っていなかった。向こうもこちらの正体を知っても初めは何ら変わりはなかった。
だが……
やはり俺達は人間とは違う。」
拓人の言葉は波奈の心に刺さってくる。
それは冷たい氷の刃のように。
「人より身体能力は高い。そして主食は動物又は契約を結んだ者の血。人が持たない力を持つ。人からすれば変な生き物だと思われるだろう。
そして能力がある俺達を……人は羨む。
いずれそれが妬みに変わり、脅威になる。吸血鬼は人とは違うバケモノだって。」
負の連鎖は簡単に切れない。
良い事よりも悪い事の方が印象に残るのと同じ。
人間にとって吸血鬼は恐怖となった。
自分達とは全く違った種族なのだと。
そこで新たな連鎖が起きる。
人間によくある防衛反応のようなもの。
「脅威は排除しなければいけない。
そんな考えを持つ奴が出るわけだ。
人を守るためにと吸血鬼を消そうとする、バケモノを退治すると集まった者達の団体……それが『VRG』。」
拓人は自嘲気味に笑った。
しかし拳を強く握っている。
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