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わたしは困る。
「おまえが…。」
その言葉は続かない。
でも頭を持ち上げる勇気はなかった。
不良は嫌いだ。
天才も嫌いだ。
何よりも自分を利用する人間は好きでは なかった。
この男は 全てが当てはまりそうだ。
そう思っていたときだった。
頭に違和感。
何かが乗っている。
わたしは驚いた。
たまらなくなって 頭をあげる。
そこに彼は、存在した。
「えっ?」
瞳は笑っていた。
しかし、無表情はいつもどおり。
ここ最近、様子が変だと思う。
「……。」
興味はない。
関わりたくもない。
だけど…気付いたときには近くにいた。
「その手をどかしてくれない?」
冷たくいい放つ。
意味が分からない。
手を乗せる理由が…。
「おまえをルカって
呼ぶ…。」
彼は、見下ろした。
目線が絡み合う。
「はっ?」
わたしが声を発したちょうどそのとき 彼の手の重さは消えた。
更に疑問は浮かぶ。
ルカって呼ぶ…、好きなように勝手に言うといい。
なのに…この男は何を考えているのだろうか?
わたしは眼鏡をかけた。
ガラスの向こうの男。
そのとき理解した。
確かに彼は、魅惑的な男だった。
背はスラッと高く、
存在感がある。切れ長の瞳。
スッとした 高すぎる寸前の鼻。
薄い唇は笑みを知らないけど…。
肌は白い。
耳には黒いピアスが下がっていた。
勿体ない。
穴を開ける行為が。
しかし、わたしには関係ない。
顔からは気持ちの"気"の字さえ読めないほど 表情はなかったけど。
彼を取りまく、女子生徒はきっと その魅惑的な雰囲気に引き込まれているのかもしれない。
「なぁ?」
「……。」
彼が話しかけてくるとは想像すらしていなかった。
「オレと付き合え。」
彼は、ただそう呟いた。
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