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「年頃の子供の部屋に勝手に入んのやめろや、母さん……」
ーー夏休みだから。
そんな理由でずっと部屋にこもっている俺を心配しているのであろうことはわかる。
だが予定は無いのか、とか聞くのはやめてほしい。なんかぼっちみたいな気分になるから。
別に友達がいないわけじゃない。ちょっと真面目で、宿題終わったら遊ぼうと約束したんだ。
……嘘じゃない。嘘じゃないぞ。
自然の風に当たっていたせいか、あの頃の夢を見た。(厨二病真っ盛りのあの頃、だ。)揺れるカーテンをぼんやりと見つめながら、記憶をたどる。
「自分が死ぬのはいいけど、先輩が死ぬのは嫌です」
君が唐突に放った言葉。
「俺だって自分はいつ死んでも良いと思ってるけど」
しばらくの沈黙の後、君のうつむいた顔を覗くと、凄く嬉しそうだったのを、今でも覚えている。
それが「俺達」だった。あの歪んだ、共感という関係。
そしてあの言葉こそ君だった。相手の気持ちを考えない言葉。それは只単に自分本意、又は自分勝手という事だが、別に俺はそれを責めたり嫌ったりする気はない……資格もないとは思うが。
俺は、あの時は言わなかったが、自分が何時死んだとして何も思いはしないが、他の誰かがそうなったとして、ーーーーやっぱり何も思わないだろう。
それは俺にとってすべてを受け入れる一つの形のようなモノで、かなり宗教めいた馬鹿馬鹿しい、なんといったら良いか……とにかく、何かだった。
君はあの花が好きだった。明るくて好きなのだと言った。
俺はあの花が嫌いだった。明るくて嫌いなのだと思った。
君は大人が嫌いだった。大人は嘘つきで、他人を縛るのが得意だからだろうか。
俺は大人が好きだった。大人は人を縛るのが得意で、俺達を視誤っているからだ。
なんとも捻くれた二人だ、とお思いだろう。
俺達に共感できる事柄なんぞほぼ無くて、それでいて、ほとんどその共感により関わり会っていたのだから。ちょっとした意味の捉え方の違いだ。もしくは都合の良さか。
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