『見上げているもの』

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褒められたのか貶されたのかバカにされたのかは考えないようにして、今の言葉を素直に褒められたと認識した。 でも、ちっとも嬉しく思わなかったのは褒めてくれた男が、人間の男ではなくて毛むくじゃらの野良猫なのだから。見てるだけで暑苦しい。 「失礼ッスね~。人のことを野良猫だなんて!こう見えても神の使い..」 「はいはい。神の使い魔でしょ?猫が口きくぐらいだから、それくらいインパクトがないとね」 食い気味自分のセリフを取られた猫は私に言い返すことなく、頭をちょこんと下げた。 「初めまして、というべきか、俺達を産んでくれてありがとうと言うべきか迷いますね~」 別にどっちでもよかった。でも言い方としては私は人間なのだから、猫を産んだことにはしてほしくない。
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