『見上げているもの』

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「ですね。この場合の『産む』という表現よりも『生む』ってほうが正しいですね。やっぱ人の言葉は難しいッス!」 思っていた通り、この猫は神の使い魔だ。私が口にしてないことを理解し、それに対する回答も的を得ている。 まぁ、彼が言うように、彼を生んだのは私であって私が彼らにそういう能力を授けたのは紛れもない事実だ。 「え~と、熊坂秋夏さん。いつもご苦労様ッス~!」 なんか嫌。嬉しくない。 彼は私の書いた小説に登場する一人の主人公。神の使い魔にして、何故か人間に加担する言わば良い猫妖怪だ。 「妖怪とは不本意ですが、あなたがそう言うならそうしておきましょう」 つまらない。そう言いたげに夏風を感じている。サラリとした風が私の髪と猫毛を撫でて過ぎ去る。
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