非人非鬼 其の壱

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「何で家出なんかしたんだ?」 正宗は壁に寄りかかり、外を警戒しながら、聞いた。 「鬼切人をご存知ですか?」 「ああ。」 正宗がそう答えると、かぐやは一度ゆっくりと瞬きをしてから、続けた。 「私は、この街一の長者の家で生まれました。」 「ってことはあんたは榊家の娘ってことか。」 あの男の情報を集めてるときに耳にした。 確か、この街で一番の金持ちだが、人当たりも良く、温厚な家だと聞いた。が、ある日突然、街の人に厳しく当たり始め、特に税の徴収に厳しくなったとも聞いた。 「はい。 昔は、父も母も優しかったのでありますが、ある日突然、皆に厳しくなり、私には外出禁止と言い渡しました。 それからずっと屋敷に閉じ込められ、一日中家事・雑用をさせられました。 それはまだ耐えられました。 しかし、私は見てしまったのです。 静まり返った夜の庭で父と母が…いえ、父と母の姿をした鬼が人を食べているのを。」 正宗は眉尻を吊り上げた。 「私はすぐさま、家を飛び出し、役所へ向かいましたが、誰も話を聞いてくれません。それどころか、私は襲われそうになりました。」 そこまで言うと、かぐやは涙を流し始めた。
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