俺は地上へ行く

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 ガイ達が住むこの穴蔵はマサラと呼ばれている小さな集落だ。人口は二百人程で、地下に穴を掘り、そこを住居として生活している。ガイ達が住むマサラの他にいくつかの集落があるが、他の集落との接する事は殆どなく、ここマサラで生まれた人間は、マサラで死んでいく。  ガイは十九歳の青年で、両親は既に他界。母親の形見のペンダントと、父親の形見の深紅のマフラーを纏っている。  ガイは深紅の正義の団という紅蓮隊を率いるリーダーで、紅蓮隊は全員で八名だ。  紅蓮隊の主な活動は集落の改築作業や、新たな住居の工事など、様々な力仕事を受け持っている。  今ガイはスコップ片手に新たな住居の基礎を作っている。蟻の巣のように地下へとどんどん延ばしていく形の住居だ。  「たっく、なんでこんな時ドリルは全部使用中なんだ!!」  「仕方ない。横穴掘るのはドリルが一番やりやすいから、しかもガイ三台もドリル壊したし」  「あれは壊したんじゃない!壊れたんだ!百年も使っていたボロドリルだったからな!だーーちきしょう後何メートルだ!?」とガイは穴を掘るスピードを速める。数メートルを一気に掘りすすみ、一気にばてて穴の中で酸欠を起こしそうになった。  「やっぱり穴堀りの天才だな、ガイ。一分でこんなに掘れるのか」とバロンが穴の上から息を荒くするガイを見下ろした。  「ハァ!…ハァ!ハァ!一分間限定の奥義だ。ハァ!……覚えとけバロン」
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