Ffug

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 実際、ファグの威力は絶大で、どんな絵でも描くことが出来る。状況さえ指定してしまえば、ファグは自動で絵を描いてくれる。細かなデータがあればあるほど、ファグは正確に、そして上等な絵を作成するのだ。それが、コンピューターが描いたとは思えないくらいの完成度で、俺が見ても、まるで普通の絵師が描いたような、そんな絵に見えてしまう。  確かに、画期的なソフトだ。  だが、代わりにそれは、俺たちの希望も奪って行った。  絵師の仕事が無くなり、俺がずっとしてきた、『絵を描くこと』が、否定的にとらえられるようになった。  もう、わざわざ手で絵を描く必要はない。ファグさえあれば、自分の思った通りの絵を、コンピューターが再現してくれる。  それでも、俺は絵を描き続けた。  ずっと、ずっとだ。  だから、俺は変人扱いされ、そして、時には狂っていると言われもした。けれど、絵を描くことは犯罪ではない。それに、楽しいから描くことの何が、おかしなことだと言うのだろうか。  そう反論したい。  けれど、それは出来なかった。  絵を描くことに意味はない。それが仕事として存在していない以上、もう絵を描いても、誰も快く思ってくれはしないのだ。  父の言う通りだ。  何の役にも立たない。  何も、意味がない。  俺は、今まで何をしてきたのだろうか。  たまに、よく分からなくなる。何を今までしてきたのか、本当に分からなくなってしまうのだ。  世間的に見れば、絵を描くことなんて一般的ではない。  ファグは世界的に普及している。企業用の物から、家庭用の物までさまざまで、用途によっても違うファグがあったりする。今では作家だけでも漫画が書ける時代だ。  絵師なんて必要ない。  そう言う時代なのだ。  それなら、俺がしていることは、本当に無駄なことなのだろうか。  偶に、わからなくなる。今こうやって絵を描いていることは、頭のおかしな所業なのだろうか。  どうでもいい。  そう思える勇気があれば、どれだけよかったか。  そんな勇気はなかったし、俺に何かが出来るわけでもない。ファグがあることは便利だし、いいことなのだろう。きっと、世間的に見ても。  ただ、俺は、 「……、」  俺は、どう思っているのだろう。  ベッドの上で、じっと考え込んだ。天井は、うす暗闇に包まれている。部屋は綺麗に整っていて、そんな中、俺がじっと、耐える様にうずくまっていた。
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