Ffug

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 パソコンの中にいるジェーブが、いつの間にか俺と話していた。そこには、俺(薄い緑色の ドラゴン)とジェーブが、楽しげに会話をしている場面になっている。俺は全く意識してない。いつの間にか、誰かが俺とジェーブが話している最中を写真にしたような、そんな感覚だった。 「……、」  笑っている。  俺も、ジェーブも笑っている。  それなのに、モニターの前にいる俺は、全く笑っていない。ずっと口を閉じたまま、何も感じていない、と言うような、無表情さを決め込んでいる。うっすらと、モニターにそれが映っていた。  嫌になりそうだ。 「……、こんなので、いいのかな……、」  分からない。  けれど、とりあえず俺は、それを.png(ピング、画像の圧縮方法の一つ)で保存すると、それをジェーブに送信する。 『@zyebu できたよ http://DRAGONSPSL/898885/p-11×××/』  本当に良かったのか、俺は分からなくなった。  描いていいのか、描いてはいけないのか、どうなのか。  また、ディレクトリの容量が大きくなった。だから、きっと明日も父に叱られる。一度描いたものを消す気は起きない。消すことなんて、俺には出来なかった。 「……、はぁ……、」  ため息をついて、俺はモニターから目を離した。  それから、小さく呟く。 「……、絵を描くのは……、無駄……か……、」  分からない。  どうすればいいのか、俺にはやはり分からなかった。  モニターの中で、ジェーブも俺も、笑っている。けれど、何故だか少し、悲しそうに見えるのは、きっと気のせいではない。  心の底から笑っている、そんな絵を、もうここ何年か描けていない気がした。心の底から、もっと喜んだ絵を、描きたい。  今の俺には、どの道無理な気がした。 『ついきのうまで  楽しかったのに  みんなに見てもらって  えがおにしたかったのに  今の私は…もう  絵のかけない  ただの生き物だ』  誰かが、俺にそう言った。  パソコンの中で、俺が、悲しそうに笑っている。  ファグ(FFUG:Final Fusioning Undetermined Gallery)が、1996年に製作された。それは、様々な絵を取り込むことによって、様々な絵を自動で作り出すことが出来るようになった機械の事だ。そのおかげで、世界のメディアは大喜びをしたのだ。これからは絵師(デザイナーなど)が必要なくなり、人件費を抑えることが出来る。そう言うことだ。
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