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帰り道、エリは興奮して話し続けた。
「もう本当、良かったー。ゆき乃誘ってくれてありがとね!光源氏さん、送って頂いてありがとうございます。ゆき乃をヨロシクです」
エリの自宅は隅田川に架かる桜橋を渡ってすぐだ。
三囲神社もここから近い。
「では、エリさん。また」
「はい!」
光源氏の微笑みを浮かべる光流に、エリは元気良く返事をした。
「じゃあ、エリちゃん、明日学校でね」
ゆき乃の言葉にエリは着物姿で親指を立てる。
「つーことで、猿若の怪は一件落着ってとこだな」
エリと別れた途端に、光流は巻き舌口調になる。
「でも…」
ゆき乃は豊川の行く末を案じて、沈んだ声を出した。
「先生の事は俺に任せろ。なんとかする」
ゆき乃の表情が明るくなる。
「なんとか出来るんですか!?」
「…多分」
「多分…ですか」
ゆき乃は俯く。
「あー、それより、なんだ。その着物、着てくれてんだな」
話題を変えようと切り出した光流であるが、平成中村座で自分がプレゼントした着物を着ているゆき乃を発見したときの、気恥ずかしさが蘇る。
「はい。可愛いお着物ありがとうございます」
ゆき乃に少し笑顔が戻る。
話している間に、見番通りにある三囲神社に到着し、ゆき乃はスカイツリーを見上げた。
「…一体、中将って誰なんでしょうね」
「……」
光流は無言だった。
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