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まだ少し肌寒い、いつもの朝。
いつもと同じように制服に着替えて、家を出て、あの坂道を上る。
他の生徒がちらほらと見える並木道を一人で歩く。いつものように学校に向かって。
だけど、それももうすぐ終わってしまうと思うと、やっぱり寂しい。
学校に行かなくなれば、みんなと会えなくなる。
……あの人に、だって。
「……ダメだなぁ」
マフラーを少しずらして、狭い道の両側に並ぶ木々を見上げる。もう蕾が見えた。
思わず溜め込んでいたものが口から零れる。吐いた息が白くならなくなったのに気付いたのはいつだっけ?
もう少し。もう少ししたら、桜が咲く。
見慣れたいつもの坂道に。
「……さよなら」
一人で呟くと、虚しさが倍増するようだった。次に浮かんできたあの人の笑顔に、きゅうっと胸が締め付けられる。
……あの人にも。
ああ、別れを。
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