とち狂いはじめたご主人様の章 ~第1幕~

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……あたしは少し、誤解してたのかもしれない。 本当は、少し素直になるのが苦手なだけ? ご主人様って、そんなにいやな人じゃないのかも。 そう思ったら、急に自分のしたことも恥ずかしくなってきた… 「い、いえ、そんな……あ、あの、すいませんあたし今日は言い過ぎたと思います。あんなこといって、恥ずかしいです」 なんだろう… なんだか気持ちが落ち着いてきてる。 さっきまでは、葉織ねえさんのこととかで、あんなに不安定だったのに… と、そのときご主人様から出された飲み物の香りに気がついた。 「これ…アップルティー」 あたしと葉織ねえさんの好きなのみもの。口をつけてみると、むかし葉織ねえさんがいれてくれたのと同じ味がした。 「おいしい…」 このあたたかさに解かされていくように。 心のなかにあったいろんな不安なんかが、ゆっくりなくなっていく。 「おいしいです…ご主人様」 ご主人様は、なにも言わずにあたしの様子をみてくれてる。 …何を考えてるのか、よくわからないひとだな。 でも、なぜかわからないけど、安らぎに似たものを感じて…… だから、きいてみようかと思った。 「ねえ、きいていいですか?」 自分でも驚くほど穏やかに、優しい気持ちで……言葉が紡がれていく…… 「葉織ねえさんのこと…教えてください」 「…わかった」 そして少しの沈黙のあと、ご主人様そういって、葉織ねえさんのことを話しはじめた。
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