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……あたしは少し、誤解してたのかもしれない。
本当は、少し素直になるのが苦手なだけ?
ご主人様って、そんなにいやな人じゃないのかも。
そう思ったら、急に自分のしたことも恥ずかしくなってきた…
「い、いえ、そんな……あ、あの、すいませんあたし今日は言い過ぎたと思います。あんなこといって、恥ずかしいです」
なんだろう…
なんだか気持ちが落ち着いてきてる。
さっきまでは、葉織ねえさんのこととかで、あんなに不安定だったのに…
と、そのときご主人様から出された飲み物の香りに気がついた。
「これ…アップルティー」
あたしと葉織ねえさんの好きなのみもの。口をつけてみると、むかし葉織ねえさんがいれてくれたのと同じ味がした。
「おいしい…」
このあたたかさに解かされていくように。
心のなかにあったいろんな不安なんかが、ゆっくりなくなっていく。
「おいしいです…ご主人様」
ご主人様は、なにも言わずにあたしの様子をみてくれてる。
…何を考えてるのか、よくわからないひとだな。
でも、なぜかわからないけど、安らぎに似たものを感じて……
だから、きいてみようかと思った。
「ねえ、きいていいですか?」
自分でも驚くほど穏やかに、優しい気持ちで……言葉が紡がれていく……
「葉織ねえさんのこと…教えてください」
「…わかった」
そして少しの沈黙のあと、ご主人様そういって、葉織ねえさんのことを話しはじめた。
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