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「なにをとち狂ってんですかご主人様?」
「ちょ!?、おまなんでいまそー」
ヤバい素がでたっ!
いかんいかん、どっしりとした主人の威厳が崩れてしまう!!
「いやとにかく、事件が解決できたのはお前の手柄でもある。まあ、オレの真実を見抜く力が一番大きな理由だが」
うぉほん、と咳払いしてからこんなこといってごまかした。
……海影の反応は?
オレの人間の小ささに気づいてないか?
しかし海影は、なんか妙な感じでうつむく……
うっ、またなんかおかしなこといっちまったか?
と思ったら、ゆっくりと顔をあげてオレに向けた。
「い、いえ、そんな……あ、あの、すいませんあたし今日は言い過ぎたと思います。あんなこといって、恥ずかしいです」
え!?
え!?
なんで!?
急にやわらかい声になって、謝る海影…
なんか急にそんな素直になられると、ちょっと頬があつくなってる気がする。
「これ…アップルティー」
軽く硬直してるオレの前で、カップに口をつける海影。
「おいしい…」
その海影の声は、不思議なひびきで。
「おいしいです…ご主人様」
そういってやわらかく笑う海影をみてるうち、何かくすぐったい気分になる。
だんだん力みがとれて、落ち着いてきて…
「ねえ、きいていいですか?」
それから、
海影は穏やかな声でオレにたずねた。
「葉織ねえさんのこと…教えてください」
「…わかった」
少しの間をおいて答えた。
「海影のほうが、もしかしたらよくわかってるかもしれないけど、」
ここで鬼のような奴だったとか、デンジャラスを超えるデンジャラスだったとかいうほど、オレは空気を読めないわけじゃない。
「厳しいけど強く、妥協しない女だったよ。そしてなにより、自分を貫き通した」
それから、オレは葉織に想いを馳せながら、少しばかり話を続けた。
たった一人の家族である父親を失っても、強く生きて仇をとった葉織。そして自らその罪に裁かれることを選んだ。
その葉織が、家族並みに心を開いて、守りたいと思っていた海影。
確かに、気持ちはよくわかる。
葉織の人を見る目は間違ってない。
その葉織の意志を、受け継ぐ覚悟は、今また強く固まっていく…
ほっとさせるような笑顔の海影をみてるうちに。
天国の葉織に誓った。
何があっても、海影を守るって。
第1章 完
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