とち狂いはじめたご主人様の章 ~第3幕~

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「なにをとち狂ってんですかご主人様?」 「ちょ!?、おまなんでいまそー」 ヤバい素がでたっ! いかんいかん、どっしりとした主人の威厳が崩れてしまう!! 「いやとにかく、事件が解決できたのはお前の手柄でもある。まあ、オレの真実を見抜く力が一番大きな理由だが」 うぉほん、と咳払いしてからこんなこといってごまかした。 ……海影の反応は? オレの人間の小ささに気づいてないか? しかし海影は、なんか妙な感じでうつむく…… うっ、またなんかおかしなこといっちまったか? と思ったら、ゆっくりと顔をあげてオレに向けた。 「い、いえ、そんな……あ、あの、すいませんあたし今日は言い過ぎたと思います。あんなこといって、恥ずかしいです」 え!? え!? なんで!? 急にやわらかい声になって、謝る海影… なんか急にそんな素直になられると、ちょっと頬があつくなってる気がする。 「これ…アップルティー」 軽く硬直してるオレの前で、カップに口をつける海影。 「おいしい…」 その海影の声は、不思議なひびきで。 「おいしいです…ご主人様」 そういってやわらかく笑う海影をみてるうち、何かくすぐったい気分になる。 だんだん力みがとれて、落ち着いてきて… 「ねえ、きいていいですか?」 それから、 海影は穏やかな声でオレにたずねた。 「葉織ねえさんのこと…教えてください」 「…わかった」 少しの間をおいて答えた。 「海影のほうが、もしかしたらよくわかってるかもしれないけど、」 ここで鬼のような奴だったとか、デンジャラスを超えるデンジャラスだったとかいうほど、オレは空気を読めないわけじゃない。 「厳しいけど強く、妥協しない女だったよ。そしてなにより、自分を貫き通した」 それから、オレは葉織に想いを馳せながら、少しばかり話を続けた。 たった一人の家族である父親を失っても、強く生きて仇をとった葉織。そして自らその罪に裁かれることを選んだ。 その葉織が、家族並みに心を開いて、守りたいと思っていた海影。 確かに、気持ちはよくわかる。 葉織の人を見る目は間違ってない。 その葉織の意志を、受け継ぐ覚悟は、今また強く固まっていく… ほっとさせるような笑顔の海影をみてるうちに。 天国の葉織に誓った。 何があっても、海影を守るって。 第1章 完
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