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「どうした?」
「何かそれ…さみしいよ…」
「さみしい?」
「だって、家族がいないってことでしょ?」
幸平の答えに、桜は思案するように顎に指を当てて少しだけ目を伏せた。
「…そうだな。私に家族という関係性に当たる者はいない。」
頷き、桜は顔を上げて真っ直ぐに幸平を見た。やはりいつもと変わらない無表情のままだ。
「だが、仲間はいる。」
「仲間?」
「うん。同じ『カウズ』の構成員達を、私は仲間と認識している。一人であることがさみしいの定義ならば、私はさみしくない。一人ではないからだ。」
きっぱりと桜が言い切ると、幸平はぱちぱちと瞬きをしてから、曇り空が一気に晴れ渡っていくように表情を変えて目を丸くした。
「…そっか…仲間がいたら、さみしくないよね…!」
「それ以前に私に家族という概念もない。故にさみしいという感情も持ち得ていない。」
「…それ、違う意味でさみしいよ…」
「だが家族や仲間の重要性は私もある程度認識しているつもりだ。だから、望月幸平。」
「え、何?」
「東雲朝義から距離をおくな。君は彼の仲間であり続けてやるべきだと、私は思う。」
「………どうゆう意味?」
「彼は…」
「はいお待たせー。」
幸平の質問に桜が答えようとしたところで、ピッチャーを持ってきた日向がやってきた。日向はテーブルにピッチャーを置いてから、幸平と桜を見比べて若干表情を引きつらせる。
「…あ、ごめん、邪魔しちゃった?」
「いいや。ただの雑談だし、再開もできる。」
「けど幸平、そろそろ打ち切った方がいいわよ?」
「?」
「もうすぐじっちゃんがキレるわ。」
「え゛…!?」
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