その1

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「どうした?」 「何かそれ…さみしいよ…」 「さみしい?」 「だって、家族がいないってことでしょ?」 幸平の答えに、桜は思案するように顎に指を当てて少しだけ目を伏せた。 「…そうだな。私に家族という関係性に当たる者はいない。」 頷き、桜は顔を上げて真っ直ぐに幸平を見た。やはりいつもと変わらない無表情のままだ。 「だが、仲間はいる。」 「仲間?」 「うん。同じ『カウズ』の構成員達を、私は仲間と認識している。一人であることがさみしいの定義ならば、私はさみしくない。一人ではないからだ。」 きっぱりと桜が言い切ると、幸平はぱちぱちと瞬きをしてから、曇り空が一気に晴れ渡っていくように表情を変えて目を丸くした。 「…そっか…仲間がいたら、さみしくないよね…!」 「それ以前に私に家族という概念もない。故にさみしいという感情も持ち得ていない。」 「…それ、違う意味でさみしいよ…」 「だが家族や仲間の重要性は私もある程度認識しているつもりだ。だから、望月幸平。」 「え、何?」 「東雲朝義から距離をおくな。君は彼の仲間であり続けてやるべきだと、私は思う。」 「………どうゆう意味?」 「彼は…」 「はいお待たせー。」 幸平の質問に桜が答えようとしたところで、ピッチャーを持ってきた日向がやってきた。日向はテーブルにピッチャーを置いてから、幸平と桜を見比べて若干表情を引きつらせる。 「…あ、ごめん、邪魔しちゃった?」 「いいや。ただの雑談だし、再開もできる。」 「けど幸平、そろそろ打ち切った方がいいわよ?」 「?」 「もうすぐじっちゃんがキレるわ。」 「え゛…!?」
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