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「俺も持つよ。」
「…すまない。」
言いながら左手の荷物を受け持った幸平に、朝義は頷くように軽く頭を下げた。それに笑顔を返して幸平は歩きだし、朝義も並んで歩く。
「今日おなべ?」
「ああ。」
「おなべいいよねー。まだ寒いし。」
「ああ。」
「俺ダイコンと白菜が入ってるのが好きー。」
「そうか。」
「おなべとかおでんの時にビールがあるといいんだよねー!!」
「…………待て。」
無邪気に出てきた言葉に、適当な相づちを打っていた朝義は思わず足を止めた。それに気づいた幸平も、数歩先を進んでから止まって、怪訝そうに振り返る。
「何?」
「今突っ込み所が多数あったが…飲酒査定をクリアしているのか?」
「うん。」
朝義の問いに、幸平は即答で頷いた。
大抵のアンドロイドは外見年齢が実年齢と違う為、飲酒査定という制度によって飲酒可能かどうかを定められている。
外見があからさまに子供でない限りは、登録年数が半年を越えていれば査定を受けられ、検査を通れば専用の身分証明書が発行される。
幸平の外見は低く見積もっても十代後半といったところなので、査定を受けることは可能だろう。
「じっちゃんがね、男なんだから酒ぐらい飲めんとな!って言って、半年経ったらすぐに査定に行ったんだ。受かった時はじっちゃんの方がうれしそうだったなあ…」
「……そうか。」
何やら大和田の言葉に私情的な(例えば息子のような存在と晩酌を共にしたいといった風な)意図が見えた気がしたが、あえてどこにも触れずに曖昧な表情で頷いて、朝義は歩みを再開した。朝義の胸中に気づいていない幸平も後をついていき、
「……」
「…っ…」
二人同時に足を止めた。
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