その2

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「…望月、」 「うん。」 「その袋は卵が入っているから慎重に置け。」 「え、そっち?」 「当たり前だ。この程度に気づけないほど鈍感ではないだろう。」 「そうだけど…」 微妙に緊張感のない会話をしながら担いでいた米袋と持っていた買い物袋をそれぞれ地面に置き、幸平と朝義は同じ方向を見やる。 「…出てこい。」 静かに朝義が言い放つと、橋を渡りきった先にある廃ビルの陰から人の姿がわらわらと出てきた。 揃いの黒ジャケットと黒の覆面。不本意ながら見慣れた相手達だ。 「『コレクター』…」 「用件を…聞くまでもないな。」 ため息をついて、朝義は右袖を軽くまくる。それにならうように幸平は左袖をまくり、各々の手首に巻かれている腕時計型チェンジャーの姿を見せた。 「貴様等のフレイム・ソウルをもらい受ける。」 「いやだ。」 「タダでくれてやるつもりはない。」 通告に即答し、幸平はその場で踏ん張るように、朝義は自然体に近い様子でそれぞれ構える。同時に『コレクター』戦闘員達も、今にも飛びかかりそうに身を低くした。それを見据えながら、二人は戦う為の言葉を放った。 「ヘリオス起動、」 「ソル起動…」 「「変身!」」 音声にチェンジャーが呼応し、鈍く光る粒子が霧のように幸平と朝義の姿を隠した。 一瞬で消え去った霧の奥から、二つの姿が現れる。 全身を覆う黒のスーツに、片方は赤、もう片方は青を基調とした装甲と仮面を纏った戦士。 フレイム・ソルジャー・ヘリオス フレイム・ソルジャー・ソル 太陽神の名を持つ二人のソルジャーの内、先陣を切ったのは青い装甲のソルの方だった。右手に大型のナイフを握り、一直線に黒の集団へと突っ込んで行く。戦闘員の何人かは迎え撃とうと構えるが、それよりも早くソルのナイフが彼等を捉える。次々と斬り捨てられた戦闘員達は、声もなく地面に倒れ伏した。 「だあぁぁぁぁっ!!」 元気のいい雄叫びと共に地を蹴って拳を握ったのは、赤の装甲のヘリオスだった。ソルより若干遅れて集団へ突っ込み、拳を振るう。攻撃はあっさりかわされたが、ヘリオスは慌てず騒がず周囲に意識をやる。
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