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嫌ついでに、反論だけはしておく。
「…氷堂、不法侵入という言葉は知っているか?」
「地下組織たる秘密諜報機関の構成員に、表世界の法を問うのか?」
「法律に表も裏もないだろう…!!」
それ以前に裏社会の、それも戦闘仕様アンドロイドが規則正しい食生活を説くのもおかしな話ではある。
若干突っ込み所の違うことを朝義が唸ったところで、二階から扉の開く音がした。扉を開けた主は、ぺたぺたと足音を立ててゆっくりと階段を下りてきた。
「おはよ~朝義……あ、桜。」
「おはよう望月幸平。君も意外に早起きだな。」
「え…そう?」
まだ起ききっていないのか眠そうに目をこすっていた幸平は、桜の見解に目をこするのを止めてきょとんと首を傾げた。
「お店の準備とかあるからいつもこれぐらいに起きてるけどああぁっ!!」
「うるさい。どうした?」
言葉通りうるさげに眉を寄せて朝義が聞くと、いきなり大声を上げた幸平は慌てて時計を見て表情を引きつらせた。
「今日から『やまと』再開するんだった!!遅れたらじっちゃんにどやされる!!」
言うなり幸平は、勢いよく今降りてきた階段を駆け上がっていった。それを朝義は渋い表情で、桜は無表情で見送る。
「……賑やかだな。」
「あーまったくだ…」
ぽつりと感想を漏らした桜に、朝義は早朝から疲れきったため息を吐いた。
そんな朝義を一瞥(いちべつ)してから、桜は口を開く。
「だがいい傾向なのかもしれない。」
「?どういう意味だ?」
「恐らく私に回答を口にする権利はない。」
即答し、桜は幸平が慌ただしく上っていった階段を静かに上がっていった。
「…騒がしくなっただけだろう…」
桜が幸平に朝食はとっていけと言っているのを聞きながら、朝義は面倒くさそうに顔をしかめてようやく自宅に上がった。
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