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「幸平にも色々考えとることがあるんじゃろう。」
「じっちゃーーーん!!」
その場を締めくくるように大和田が息をついたところで、話題の中心であった幸平が大声で叫びながら走ってきた。
余程慌てて来たのか頭には寝癖がついていて、前を開けたジャンパーは脱げかけている。途中、縁石に躓いて盛大に飛び上がるが、危なげなく着地して大和田の前まで来る。
「遅いぞ幸平!何やっとった!?」
「ご、ごめん…ここまでの移動距離のことすっかり忘れてて…」
「そんなことだと思った…」
「あれ?みんな今日早いね?」
日向の呆れた声は耳に入らなかったようで、ジャンパーを着直していた幸平は常連達の姿を見ると目を丸くした。
「そりゃあ今日から『やまと』が再開だからな。」
「そういえば聞いたぞ幸平君、ゆきじさんにいびられて出て行ったんだって?」
「え?え、ち、違うよ!!じっちゃんはそんなことしないもん!!」
「ちょっと、幸平をいじめないでよ!」
「まあまあひなちゃん。しかし、何だって突然『やまと』を出たんだい?」
目をつり上げた日向をなだめつつ尋ねると、幸平は複雑そうな表情で首を傾げ、思い切ったように回答を口にした。
「えっと……そうだ!そう、社会勉強!」
「…それ、ひなちゃんも言ってたよ…」
幸平の口から出た、ついさっきの日向とほぼ同じ回答に、常連達は思わず笑いだした。
一年近く姉弟のように過ごしてきた為か、幸平は時折日向と同じ言葉を口にする。示し合わせてもいないのにほぼ同じタイミングで同じ言葉が出ることも、そう低い頻度ではない。二人を親戚、あるいは本当の息子や娘のように可愛がる住人達からしてみれば、妙にタイミングの合う二人の姿は微笑ましく映る。
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