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天空に存在する城。その一室では、俺、雷璃=神野と一人の女の子がいた。いや、別に厭らしい意味ではない。
二人を挟んだ中央には、一方的なまでに攻められているチェス盤。もうここからひっくり返すのは無理だろう、と思われる程の戦局だ。
「ぐっ……ぬぅ……」
「もう終わり?」
これ以上考えても、ひっくり返すのは無理。素直に負けを認めるのが道理だよな。うん。
「ま、参った……」
「やったー! パパ様に勝ったー!」
――俺が。
クソッ! 何で七歳の実の娘にチェスで負けなければならんのだ!
「パパ様よわーい!」
「は、はは。何をおっしゃる。俺はまだ本気を出していないヅラ」
何だこの語尾。
「ふーん。じゃまもう一回やろう?」
「ごめんなさい許してください」
下手な見栄を張るのは間違ってるな。
「はぁ。リンナ、こっちへ来なさい」
娘を抱っこして、頭を優しく撫でる。くすぐったいのか、満面の笑みで首に抱き着いてきた。
娘の名前はリンナ=神野。漢字では凛梛と書く。チート具合は俺の能力を少々と、知弦さんの能力を少々。そしてどんな事でも一瞬でマスターする、『完全なる力』。今回はチェスを教えたら、二回目で負けた。
勝てるとしたら、知識と勝負ぐらいだな。蜜柑の知識なら負けん。
「うゅ。パパ様、お腹空いたー」
「ん? じゃあママの所行こうなー」
「うん! ごっはんーごっはんー♪」
チェス盤をボックスの中にしまって、俺らは部屋を出た。
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