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クレーマー
訴訟とまではいかないまでも、文句を言うのが趣味のような人もいます。
中年の男性が糖尿病で入院しました。インシュリンの注射で治療し、3週間ほどで血糖のコントロールはうまくついて、退院の運びとなりました。
この人はクレーマー(常習的苦情屋)歴があるので、私どもも細心の注意を払っていたはずですが、思わぬところに落とし穴がありました。
退院後、患者から電話がありました。退院の時もらったインシュリンの使用期限が切れているというのです。
インシュリンの注射ボトルは、打つ量にもよりますが、だいたい長期間の使用になります。例えば、300単位入っているボトルであれば、1日10単位ずつ打って、1カ月間もちます。
ボトルの封を切ったときは使用期限は大丈夫だったのですが、退院時に、使用中のボトルを新品のものといっしょに手渡した時には、その期限が切れてしまっていたのです。それを患者から追及されたのです。
インシュリンの製造会社に問い合わせたところ、有効性には全く支障はないので心配いりませんという返事でした。
それをいくら患者に説明しても、納得いかないと訴訟も辞さない口ぶりでした。使用期限が切れているものを渡したこと自体は問題ですが、こういう手違いは時には起こることです。医療ミスとまではいえません。
製薬会社の見解を交えていくら説明しても、電話でしつこく責め立てるので、どうすべきか悩み、知り合いの弁護士に相談しました。
「そういう内容なら毅然とした態度で対応してください。もしそれでもらちが明かないようなら、私から言いましょう」
というアドバイスをもらいました。
弁護士のその言葉を患者に告げましたら、「弁護士」という肩書きがモノをいったようで、患者のクレームはいっさい無くなりました。
クレーマーのような人は、弁護士とか警察とかいう権威には弱いようです。
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