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精神科と外科
私は大学卒業後、精神科の大学院に入りました。精神科の患者さんには、神のお告げを受けた方がたくさんおいでになりました。
そもそも似たりよったりの私なんぞは、へたすると、その世界にひきずりこまれて、
「と-んでもない、わしゃ神様じゃ」
なんてなってしまいそうな毎日でした。(←(^ω^)これ、ご存じ、志村けんさんのギャグ)
大学院で2年ばかり精神科をやりましたが、ひょんなきっかけで外科へとまさに180度転向したのです。あまりの急な転向に、
「お前はどういう性格なんだ」
先輩に笑われたものです。
外科に移ってみますと精神科とは大違い。
外科医なんて言うと、スカイブルーの手術着を身にまとい、さっそうと手術室に現れ、「メス!」なんて言っちゃって、さぞかし気持ちのいいものとお思いでしょうが、当の本人などは、冷た-い汗をたびたび流しながら、手術にいどんでいるのです。
いったん手術に入ろうものなら、雨が降ろうが槍が降ろうが(←(^ω^)幸い、手術室には雨も槍も降りません)、はたまた人類共通の生理的欲求が起ころうが、手を休めることなど断じて許されません。長い時には、こんな状態が10時間近くも続くのです。
こんなことがありました。
手術を始めたとたんお腹がゴロゴロ鳴り出しました。食べたものが悪かったせいか下痢気味になったのです。身をよじろうが肛門を締めつけようが、いっこうに治まる気配はありません。
幸いその時は手術の助手だったので、まだ助かりました。執刀でもしていたら手術に集中できず、違う臓器を切除しちゃっていたかも知れません。
ついに、ちびりそうになってギブアップ。赤面しながら小声で打ち明けて、トイレに駆け込みすんでのところでセーフ。スッキリして戻って来ると、しらけた様なスタッフたちの視線。
そりゃそうでしょう。気合を入れていざ執刀という時に、下痢で中断なんて迷惑千万きわまりなし。
下痢止めの注射を打って、
「どうもどうも」
ペコペコ謝りながら、手術を再開したのです。
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