第2章 ゴーディア編

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  フェルデンがいる地下牢から、ユリウスが向かった離棟はかなり離れていて、今から行くには時間的に無理がありそうだ。   くしゃりと金の髪を掻き毟ると、フェルデンはちっと舌打ちした。   この城のどこかに、あの無垢な少女が囚われているというのに、無情にも時間は刻々と時を刻んでゆく。   ふとフェルデンは地図のある箇所に目をとめた。   扉の描かれていない奇妙な空間。 じっとそこを見つめ、指先でその場所をなぞる。 扉は描かれてはいないけれど、確かにここには何かの部屋がありそうだった。 というのも、フェルデンの住む白亜城にも同じような隠し部屋がいくつか存在したからだ。 この奇妙な空間は、その隠し部屋の構造にとてもよく似通っていた。 (ここだ……!)   フェルデンはくしゃりと地図を握り締めると、勢いよく駆け出した。   地下牢から左程離れてはおらず、パーティーの終息まで余り時間が残されていない。   フェルデンは息を切らせながら湿った石造りの階段を駆け上がった。 薄暗い廊下に取りつけてある蝋燭の火がゆらゆらと仄暗く、不気味に大きな人影を壁に映し出した。 「しっかし、クロウ陛下って言ったら、まだ子どもじゃないか? ルシファー陛下は一体何をお考えなのか」 「おい、お前、言葉には気をつけろ! アザエル閣下のお耳に入ったら、命はねえぞ!」 二人組みの見回り兵が明かりを手に、階段に面した廊下を横切っていく。 フェルデンは上がった息を抑えると、じっと死角となる階段の陰へと身を潜め、二人が通り過ぎるのを待った。   地図によると、隠し部屋らしき場所があるのは、この廊下を右に折れてその突き当たり。 見回り兵が逆方向へと姿を消して行ったのを確認すると、フェルデンはふうと大きな深呼吸をして呼吸を整え、再び走り始めた。   魔城は白亜城よりもひどく冷える。周囲を山脈で囲まれている気候のせいか、ゴーディアの王都マルサスは、気温が低いようだった。   フェルデンは、突き当たりの石壁の前に立った。一見ただの石壁のようにも見える。 コンコンと壁を拳で叩くと、中の空間に響くような音が返ってきた。 (間違いない、ここは確かに部屋だ!)   ぺたぺたと石壁のあちこちを手で触って、何か仕掛けが隠されていないかを調べるが、見当たらない。
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