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【17話 別れ】
その昔、創造主は世界に天上界と地上界の二つの世界を創った。
地上には豊かな創造力を持つ人間を、天上には神に最も近い力を持つ天上人をを住まわせた。
非力な人間は、天上人を時として神と崇め、崇拝し、この世の災いや苦しみから逃れる為に神として彼らを讃えた。
あるとき、自由な天上人ルシフェルが退屈な毎日にうんざりし、悪戯心で人間に化け、地上へと降り立った。
その際に美しい人間の娘と恋に落ち、天上界では禁忌とされていた肉欲、愛欲に溺れてしまう。
天上で最も創造主に愛されていたルシフェルは、禁忌を破ったことで創造主の怒りを買い、エルの称号を失って、永久に地上界へと追放されてしまったのである。
このとき、創造主はルシフェルの力を全て奪ってしまう筈だったのだが、既にルシフェルは神とさして相違ない程の圧倒的な力を持ってしまっており、反発するルシフェルを前に、創造主はそれを奪い去ることが出来なかった。
皮肉なことに、創造主はルシフェルを愛するがあまり、強い力を与えすぎてしまっていたのだ。
天上界を追放されてしまったものの、力を失わずに済んだルシフェルは、魔王ルシファーとして地上界に君臨し、自らの魔力を特定の人間達に分け与え、その者達に子孫を残させることで、魔力を持つ者達を増大させていった。
それが魔族の起源である。
魔族達は、魔王ルシファーのもと、長い年月の間平和に暮らしていたが、欲深く非力な人間達は、生まれながらに不思議な魔力を持っている魔族を脅威と感じるようになった。
いつか、魔族に人間が滅ぼされるのではないかと恐怖し始めたのだ。
力を持たない人間達は、なんとか魔族の力に対抗しようと、さまざまな行動に出始めた。創造主に与えられた豊かな創造力を駆使し、さまざまな武器や兵器を開発し、魔族に攻撃を開始したのだ。
魔王ルシファーは、初めはそうした人間の攻撃をいとも容易く退けてきたのだが、あるとき人間が神をも冒涜するような恐ろしい武器を作り出したのだ。
“魔光石” である。
その人工的に作られた石は、魔族の人々を攫っては殺し、その血液を収集、凝縮し、結晶化した特殊な石である。
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