第2章 ゴーディア編

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  そのときに自らが仕える主に何が起こったのかを、そして自分が犯した失態を瞬時に悟ったのだ。   そんなことがあった為、ルイはひどく心配性になっていて、ほんの少しの朱音の言動にも敏感だった。 「ルイ……。心配かけてごめんね。わたしが昨日勝手に飛び出してったせいで、きっとあいつに怒られたんでしょ?」   ルイは目を見張って扉を後ろ手に閉めた。 「いえ、違うんです……。全てはクロウ陛下から離れた僕の責任なんです」   すっかり意気消沈してしまっているルイに朱音は同情した。   見た目はクロウだか魔王の息子だか、何だか知らないが、中身は平凡な中学生“朱音”だというのに、そんな自分の為に尽くそうとするルイに申し訳ない思いを抱かずにはいられない。 「えっと、そんなことより、大変なんです! 元老院が、アザエル閣下の地位を剥奪し、サンタシにその身柄を引き渡すことを今朝決めたそうです!」   ルイはひどく興奮して、朱音に縋るような目を向けてきた。 「ふうん……、あいつ、何したの?」   朱音はさして興味も無さそうに、クイックルにクッキーをやる手を止めないまま言った。 「僕にも真偽がわからないんですが、アザエル閣下がこの城を留守にしていた間、閣下はサンタシの領土内に入って、地を荒らし兵を斬ったとか……」   朱音はぱらぱらと手の中のクッキーの粉を零すと、従者の少年に詰め寄った。 「それって、どうゆうこと!?」   急に服の袖口を掴まれて、まごついたルイは、美貌の主を見つめ返した。 「えっと、つまりは国の許可なしに勝手な行動をした謀反者だと元老院は話しているそうです」   アザエルがサンタシの領土内に入ったことや、兵を斬ったことは事実であった。   しかし、それは朱音をアースから鏡の洞窟の力を使ってこちら側の世界レイシアに連れて来る為にしたことで、勝手な行動などではなく、列記とした国王ルシファーの命の元に動いた結果である。 「僕が思うに、アザエル閣下は賢いお方です。決して何もないのにそんな軽薄な行動はとられない筈……。きっと何か重要な理由があったに決まっています」  
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