第2章 ゴーディア編

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  それを機に、魔王ルシファーはここぞとばかりに各地に遠征軍を送り、サンタシの武器生産の主要な街を占領することで、国の内側から崩壊させる策に乗り出したのだ。   ここミラクストーの街もそうした中の一つで、砲弾生産工場の密集する地であった。 「リュック隊長、またあの娘が来てますよ」   街を見事制圧したゴーディアの騎士団は、五日程前から街の中心部を駐屯地として占拠していた。   そこへ、毎日のように現れるパン屋の娘。編み込んだ茶色い髪と、朗らかな微笑みは、魔族の騎士達を虜にしていた。   パン屋の娘は、マリーという名で、騎士団の中で一際男らしく、珍しい霞みがかった灰色の髪の騎士に恋をしていた。 サンタシでは幼い頃から魔族は恐ろしい種族と教えられてきたが、その男がマリーに向ける眼差しはとてもそんな恐ろしいものには見えず、余ったパンを差し入れに持っていくと、いつも男は喜んでそれを受けとってくれた。 「リュック、わたし、あなたが好き」  ある日突然のマリーの突然の告白に、リュックはひどく喜んだ。 二人の間を邪魔するものは何も無く、人間の娘マリーと魔族の騎士リュックは愛し合うようになり、やがて結ばれた。   しかし、幸せはそうは長く続かなかった。   街を制圧したリュックは、半年の月日を過ごしたミラクストーを離れ、ゴーディアの地へ引き戻されることとなったのだ。   その大きな理由は、サンタシのロベール王が身動きのとれなくなってしまった自国の危機をなんとか乗り切ろうと、大陸の南に位置する、サンタシ、ゴーディアに告ぐ軍事国、カサバテッラを味方に引き込んだことにあった。   カサバテッラは小国ながら近年優れた軍事技術を持ち始め、急激に成長しつつある国であった。 今まで大人しくしていたにも関わらず、サンタシの勢いが落ちてきた今、うまくそれを利用してサンタシに成り代わろうと画策し始めていたのだ。   こうして、カサバテッラは、遠征で兵の薄くなったゴーディアの横腹を攻め始め、遠征に向かっていた兵の多くが急を要して国内の防御へと回呼び戻されることとなった訳だ。   リュックが街を去ることを知り、マリーはひどく悲しんだ。   しかし、戦争は無常にも再び二人を引き裂いてしまった。
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