第2章 ゴーディア編

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  そのしばらく後、リュックの率いる騎馬隊は、ゴーディアの地でカサバテッラの集中攻撃を受け全滅し、二人が再び出会うことはもう二度となかった。    だが皮肉なことに、マリーはリュックの子を身篭っていたのだ。   マリーは、双子の男の子を出産し、それぞれにルイとロランと名付けた。   二人は母の愛の傘下で大切に育てられたが、二人を育て上げるには、ただの人間であるマリーの寿命はあまりに短かすぎた……。   魔族の血を引く者は、人間の約十倍もの時を生きるが、即ち成長も遅い。 ルイとロランが人間でいう七歳程に成長する頃には、母マリーはこの世を去ってしまっていた。    残された二人の子どもは、長年の間聞かされてきた父リュックを探す旅に出る。 魔族である父ならば、きっとまだ生きていると信じていたのだ。   二人は苦労の末、ゴーディアの地へ渡り父リュックの消息を尋ねるが、父リュックは母と別れたすぐ後に戦死していたことを知る。   「そんな……、じゃあ二人は、どうなったの……?」   朱音は、過酷な双子の人生を思い鼻の奥がつんとするのを感じた。 「幸い、僕らは魔族の血を引いていましたし、僕らは結界術に長けていましたので、ゴーディアの軍から引き抜きを受けました」   引き抜かれた幼い双子は、ゴーディアの戦力になるよう教育、訓練を受けることになった。 そのときに幼い双子の面倒を見てくれたのが軍事総司令官アザエルだったのだ。 「僕とロランはアザエル閣下に大きな恩義があるんです。閣下は僕たちの育ての親だとも言えます……」   ルイは突然言葉を詰まらせた。
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