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にこりと微笑むクリストフに、ごめんと朱音が照れながら謝ると、とんでもない! ジョークですよ、とクリストフが笑顔で返した。
「クリストフ、貴方、一体何者ですか……!?」
ルイは疑いを込めた目でクリストフに詰め寄った。
「知っての通り、わたしは、しがない美容師ですよ」
ルイは窓の外を指差して囁き声で怒鳴った。
「そんな訳ないでしょう! この城では兵が夜も交替で見張りをしているんですよ? それにこの高さの窓からいとも容易く侵入してくるなんて……、ただの美容師な筈がないでしょう!?」
すごい剣幕のルイに、クリストフは苦笑を洩らした。
「まあ、ただの美容師ではないことは認めますよ。ですが、陛下や君の敵でないことは約束しておきます」
長くて質量のあるくるりとカールした睫を、美容師の男は片方だけ瞬かせた。
「そんなこと、信じられる訳ないでしょう!? 陛下、こんな不審な男を信じてはダメですよ!」
クリストフは肩を竦めて苦笑を洩らした。
「陛下、行くのなら早くしないと機を逃してしまいますよ」
「わかった、あなたの言う通りにする。で、どうすればいい?」
ルイは驚いて黒髪の主の顔を振り返った。
「陛下! 何をなさるおつもりですか!?」
しっと朱音は扉を気にして人差し指を立てた。
扉のすぐ外には近衛兵のトマ・クストーが見張りをしている。
いつか朱音が癇癪を起こしたときのように、騒ぎを立てるといつ彼が部屋に飛び込んでくるかわからない。
「空を飛ぶのはお嫌いですか?」
クリストフは突拍子もないことを口にした。
「え?」
「は?」
朱音とルイは気の抜けた声を出す。
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