第1章 サンタシ編

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これが夢でなければ、朱音は謎の外人に自宅から抱きかかえられたまま外に出て来てしまっているということになる。 しかも、 男が今歩いているのはどこかもわからない山の中。   さやさやという葉の音やどこかで梟が鳴く声がする。 ジーという虫の声はますます周囲の静けさを際立たせていた。 「時空の扉です。考えていていた以上にあなたを見つけ出すのに時間がかかってしまいました。扉の向こうでは既に追手が迫っています」   身動きがとれない体勢の中、朱音は無理矢理首を起こすと、視界に入ってきた信じられない光景に絶句した。     山の奥のほんの少し開けた場所に、暗闇の中ぽっかりと口を開ける金色の光。 穴の大きさは人が一人腰を屈めてならなんとか収まる程のものだ。   しかし、光は今尚縮み続けていて、あと数分もすれば人さえ入り込めない程になってしまうだろう。 「ま、待って待って! 時空の扉って?」  
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