第3章 旅編

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  濃げ茶のくるくるとカールした髪をふわりと揺らして、クリストフは膝を床につき黒髪の朱音の目をじっと見た。 「わたしは、自由な男です。誰からも束縛されない。わたしを動かすことができるのは、わたし自身の意思だけだということを……」   そして目鼻立ちのくっきりした謎のこの男は、にこりと邪心の無い顔で微笑み掛けた。 「即ちわたしは誰の命令でもなく、わたし自身の意思で陛下の自分探しの旅にお付き合いするということです」   ルイはまだこの謎多き美容師の男を信用仕切れない気持ちでいっぱいだったが、なぜかもう少し様子を見ていようと、そう思えたのである。
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