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嫌な予感がして朱音はもう一度この腕から逃れようと身動ぎして声を張り上げるが、
「申し訳ありませんが、今はゆっくり話している時間はありません」
というアザエルの厳しい言葉に制され、朱音の言葉は掻き消される。
腕の中で暴れる朱音の身体を一際強く抱き締めると、無言のまま光の中へと足を進めていく。
「放して! 一体わたしが何したっていうの?」
光の中に吸い込まれる瞬間、朱音の声が山の頂上に木霊した。
この時の朱音はまだ、自分を待ち受ける数奇な運命を知る由も無かった。
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