第3章 旅編

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  そう言ったきり、アザエルは目を閉じてしまった。   ユリウスは、腕を掴む熱い手の主を見て心を決めた。   身を翻して元の位置へと戻り、手綱をとると、勢いよく馬を走らせ始めた。   背後でとさりという音がして、ちらりと振り向くと、フェルデンが荷台の上で倒れているのが見えた。 息はひどく荒く、肩は呼吸の度に大きく上下している。   ユリウスははっとしたが、馬を止めることなく鞭打つ手を一層強めた。 例え、これがアザエルの策略であったにせよ、今は無二の友の具合が優先である。    三人を乗せた荷馬車は、キケロ山脈の途中で、港からボウレドへと方向を転換していった。
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