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そしてフェルデンの額に浮かぶ汗を布で拭ってやった。
「きみは彼の友達かい?」
「はい」
フレゴリーの質問に、ユリウスは間髪入れず返答した。
診療所の前に停めた荷馬車にはアザエルが残っている。
腕を拘束はしているが、あの男が逃走したのではないか、と急にユリウスは不安になった。
診療所の窓から慌てて荷馬車の方を覗くと、荷台の上にフードを被った影が変わらぬ姿勢で座っているのが確認できた。
いつの間にか日はどっぷりと暮れてしまっている。
ユリウスはほっとしながら窓際の腰掛け椅子に腰を下ろした。
「それにしても、きみ達は何者かね? アザエル様と一緒に旅をしているとは……」
そもそも、ボウレドに到着したのは日暮れ時で、アザエルがこの診療所へと向かうようにユリウスに指示したのである。
口を噤んでしまった小柄の青年に気付き、フレゴリーはその質問をすぐに取り消した。
「彼はしばらくこのまま動かさない方がいいだろう。今夜はうちで彼を預かるから、きみとアザエル様はどこか宿をお探しなさい」
フレゴリーは信用できる街医者のようだった。
アザエルの顔利きだと聞いたときは、どんなにあくどい医者だろうかと考えたりもしたが、ユリウスはあの冷酷な男にもまともな知り合いがいることに少々驚いていた。
「大丈夫、高熱は続いてはいるが、今すぐにどうのということはない。今日は君も疲れただろう、ここはわしに任せて休みなさい。今度は心労が祟って君まで倒れてしまうぞ」
ぐいと背中を押されて、ユリウスは気掛かりな気持ちを捨て切れないまま、フレゴリーによって診療所の外まで連れ出されてしまった。
「いや、でも……」
ユリウスの声を無視して、フレゴリーは荷馬車の後ろに腰掛けたままのアザエルに声を掛けた。
「アザエル様、治療は終わりました。今夜は彼をうちで預かりますから、こいつを連れてどこか宿をお探しください」
“こいつ”と呼ばれてかちんとしながら、ユリウスはフレゴリーを振り返った。
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