第3章 旅編

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【23話 懺悔の夜】 「今日はなんたって突然の来訪者が多い日だ……」   フレゴリーはふうと溜め息を一つつくと、横目で隣室にいる二人を見つめた。   朱音はベッドに横たわる痛々しい程の包帯に巻かれたフェルデンの手を優しく握り締めていた。   高い熱のせいか、玉のような汗を額に滲ませ、フェルデンは荒く呼吸を繰り返していた。 きつく閉じられた瞳からは、あの透けるようなブラウンは垣間見ることさえできない。 この瞼の下の美しい瞳を、朱音はどんなにか見たいと願っていたのに。 「フェルデン、ごめんね」   俯いた儚く悲しげな黒髪の少年が、じっとベッドの上の青年を見つめている姿を見ると、フレゴリーは事情をを察し、診療所の入り口に佇むもう一人の人物を見やった。 「エリック、あの子は一体……」   意味深な笑いを口元に浮かべ、クリストフは近くの長椅子に腰掛けた。 「わたしの友だちのアカネです」   ふむと小首を傾げると、フレゴリーは疑わしげな目でクリストフにじっと目線をやった。 「見たところ、あのお嬢さんはどこぞの貴族の娘のようにも見えるが……。まさかお前さん……」   クリストフはしっと小指を唇にあてて静止を促すと、そのままにこにこしたまま何も話さなくなってしまった。 「んっとに、お前さんって奴は……」   呆れたように苦笑を洩らすと、フレゴリーは私室へと引き返していった。  朱音は包帯の下の傷を知っていた。   あの夜、鏡の洞窟でフェルデンがアザエルに受けた攻撃は、今でも目を閉じれば鮮明に思い出される。 アザエルの手から発されたどす黒く尖った無数の釘のようなもの。  
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