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「答えろ!」
覆面の男は、ぱっくりと口を開けた額の傷を両手で押さえながら、ちっと舌打ちをする。
ちらりと横目で倒れた仲間の近くに転がっている剣のありかを確認すると、男は隙をついてその剣に手を伸ばした。
しかしユリウスはそれを逃さなかった。男の胴にざくりと剣を突き立てると、男は身体を硬直させてどっと道へ倒れた。
ユリウスはふうと息をついて碧髪の男を振り返った。
拘束していた縄は断ち切られ、湾曲した剣が握られている。
はっとして慌てて剣を構えたユリウスを他所に、アザエルは持っていた剣をぽいと無関心に放り捨てた。
「閣下!」
ザアアアと降り付ける強い雨の中、ここでは聞く筈のない少年の声が響いた。
アザエルが物静かに振り向いた先に、灰色の髪の少年の姿。
黒く曇った空の下では、不思議とその色は銀にも見えた。
「なぜお前がここにいる……」
じっと目を細めた冷たいアザエルの声。灰色の髪の少年ルイは、物言いたげに少し口をぱくつかせると、しゅんと下を向いてしまった。
「わたしが連れて来たんだよ」
ルイの背後から真っ黒な髪の少年がすっと現れた。
ユリウスは驚きであっと声を上げる。
そこにいたのは即位パーティーの夜に見たあの、世にも美しい魔王の息子、クロウに違いなかった。
「どういうことだ、ルイ。殺されたいか」
アザエルは凍りつくような碧い目をルイに向けると、その首を片手で締め付けた。
「す、すみません……、閣下……、全て、僕の不注意です……」
「アザエル!! 違う! ルイのせいじゃない!」
朱音はルイの首にかけられたアザエルの手を引っ張った。
「こんなことやめて! 悪いのは全部わたしなんだから!」
目に涙を浮かべながら懇願する少年王の姿に、ユリウスは戸惑いを隠せなかった。
先程まで自分達を襲っていた謎の男達は、この少年王の差し金に違いないと思っていたのだ。
「陛下のお望みならば……」
アザエルは意外にもすんなりとルイの首から手を離すと、すっと朱音の前に居直り、礼の形をとった。
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