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この冷徹な男ならば、本当に二人を殺してしまいかねない。
「そんなことしたら、サンタシと戦争になるよ!?」
朱音が必死になって止めようとするにも関わらず、アザエルは落ち着いた表情のまま、先程放り投げた湾曲した剣に手を伸ばす。
ユリウスは、魔力を封じられてはいても、相当の腕の持ち主であろうアザエルの攻撃に備えて、剣の柄に手を掛けた。
「確かに……。しかし、国が国王を失うのであれば、国は滅びたも同じこと」
手にとった剣を片手に持つと、その湾曲した刃についた血を指先で絡め取る。
暗くなり、雨が降って視界が良くなかった為、今まであまり気が付かなかったが、この辺りには鉄臭い血の匂いが充満していた。
足元に転がる屍は、元の世界で見た親戚の葬式できれいに飾られた死体とは比べものにならなかった。
(こいつ、一体何を考えているんだ!?)
ユリウスは、考えの読めない魔王の側近がゆっくりと自分に向かって近付いてくる姿を見つめ、真意を見抜こうとするが、その表情は氷のように冷たく、何も感情を映し出してはいない。
どうやらここで戦闘は免れないらしい。
ユリウスの剣の腕はサンタシでも有数のものだったが、魔王ルシファーに長く仕え、ゴーディアの軍事司令官を務めた経歴のあるこの男に、その腕がどこまで通じるのかは実のところわからない。
いくら腕の立つユリウスでも、この男相手に互角に渡り合えるとは考えにくい。
「悪く思うな」
アザエルがぴたりと歩みを止めると、ユリウスに剣先を向けた。
(ならば、先に仕掛けるまで……!)
ユリウスはアザエルの間合いに飛び込むと同時に、剣を鞘から抜き取った。
『ガキイン!』
ユリウスの一撃をアザエルが剣で薙ぎ払う。
すぐさま胴を狙う攻撃に切り替え、ユリウスはさらにアザエルの間合いに踏み込んでいく。
『ガキイン!』
再び起こった刃と刃のぶつかり合い。
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