第1章 サンタシ編

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「え……?」    もともとアザエルからうまく逃れる為に嘘をついた朱音だったが、ここで初めて自分が置かれている異常な環境に気がついたのだ。 「ここ……どこ……?」   呆然として立ちすくむ。   まるで金縛りにでもあったかのようにその場から動けない朱音に向けて、洞窟からアザエルの声がした。 「お逃げ下さい!」   その直後、洞窟の中から激しい剣のぶつかりあう音が響き、ときどき数人の男のくぐもった呻き声が漏れる。   一体アザエルに何が起こったのか。 朱音の心の危険信号が点滅し、とにかくここは危険だから離れるべきだと知らせる。 なんとか自分自身を奮い立たせ、朱音は駆け出した。 (とにかく逃げないと! 生きていれば後から考える時間はいくらでもある……!)   鋭い野山の草は素足の朱音に容赦なく切り付ける。 「うっ……」   あちこちきり傷だらけになり、足の裏も小枝や小石を踏んづけたせいでひどく痛む。 ひょっとすると出血し始めているかもしれない。 「誰かいるぞ! 追え!」   朱音の気配を察知した男達が、数人朱音の後を勢いよく追いかけてくる足音が聞こえる。 (どうしよう……、このままじゃ殺される!)
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