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「確かに亡きルシファー王の血を色濃く受け継ぐ美しい容貌……、ですが貴方を見ていると、わたしにはただの可憐な少女としか思えないのですよ。貴方こそ一体……」
トクトクと早鳴る鼓動に、朱音はぎゅっと拳を握って平静を装う。
まだここでクリストフに全てを話してしまう訳にはいかない、なぜかそう思った。
「……というのが実際のところわたしの疑問です。ですが、以前話したようにわたしは決してその答えを無理には聞き出そうとは思いません。貴方が自分探しの旅を続けて答えを見つけるというのならば、わたしは決して貴方を裏切ることをしないと約束しましょう」
朱音は驚きに満ちた顔でクリストフの彫りの深い目を見つめた。
そこへルイが疑り深い声で水を差す。
「クリストフ、貴方こそなぜそうまでして陛下に関わろうとするんです? 僕は、それが不思議でなりません」
ふっと困ったように微笑むと、クリストフはルイに視線をやった。
「さて……。実のところ、わたし自身もそれが不思議なんです。おそらく、直感で感じたんでしょう。わたしとクロウ陛下は同じ匂いがする……、と」
机の上に乗せられたクイックルは翼をバサバサと鳴らしてクリストフを呼んでいるようだ。
「クリストフとクロウ陛下が同じ……?」
ルイは意味深なクリストフの言葉に顔を顰める。
「ルイ、君は先程わたしに何者かと尋ねましたね? でも今はお話できません。しかしいつかその全てをお二人に明かす時がくるでしょう。その時まで、例え何があろうとわたしを信じていただけないでしょうか?」
なかなかクリストフが来てくれないのに、クイックルは少しばかり不機嫌に羽をバタつかせている。
「冗談でしょう? どこからどう見ても不審な点ばかりの貴方を一体どう信じろと……」
「わかった。わたし、クリストフさんを信じるよ」
ルイの言葉を遮るようにして、朱音が決意を固めた声で言った。
信じられないというように、ルイは朱音の曇りの無い横顔を振り返る。
「ありがとう」
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