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「殿下の傍にはいつでもこのアザエルがおります」
少年はしゃくり上げながら大きな目でじっと男の顔を見つめた。
「アザエル、きっと傍にいてよ? ずっとだよ、絶対絶対約束だよ?」
にこりと女性のように柔らかな笑みを溢すと、男は囁いた。
「ええ、約束です。殿下はきっといつかお父上のように偉大な王になられます。わたしは、どんな犠牲を払ってでも、必ず殿下をお守りします……」
ひどく遠い昔の夢のようだった。
いや、あれは遠い記憶……?
あの黒髪の少年は遠い昔のクロウ自身、クロウの記憶の断片なのかもしれなかった。
それに、あの碧い髪と碧い目、氷のように冷たいアザエルが、あんなにも優しく微笑むことができていたなんて今からは想像もできない。
しかし、あの夢はひどく懐かしい気がした。
「目をお覚まし下さい、クロウ陛下……」
「ごほっ……」
気管に入っていた海水を吐き出し、朱音は意識を取り戻した。
飲み物を飲むのに失敗して咽たようなひどい苦しさと、そして多量に海水を飲んだことでのむかつきで朱音は胃物を吐き出した。
朦朧とする視界の中で、唯一目に入ってきたのは、碧く長い髪。
「もう無茶はお止しください」
ようやくはっきりと見えてきたところで、朱音は自分が今どこにいるのかを知った。
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