第3章 旅編

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  不思議なことに、海の中からシャボンのような小さな水の玉がふわりと浮き上がり、アザエルの身体に次々に吸い込まれていく。 「手枷が外れたことで彼を守護する水の力が、彼の僅かな魔力に共鳴して引き合っているのです。後は回復を待つしかありません」   その声を聞きながら、朱音はそのままぱたりと意識を手放した。   その傾いた身体が岩に打ち付けられることのないように、予め構えていた腕の中にクリストフは朱音を受け止めた。 「さて、あなたの望み通り、自分探しのワンピースを手に入れることができたようですね……。はたして、最終的にあなたはどんな答えを見つけるんでしょうか……」   クリストフは寝息を立てる腕の中の朱音の額に小さく口付けを落とした。
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