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それに、真っ白い砂浜。後方には森が広がっている。
小枝を組み、火を起こしたであろう薪の痕。
それに、いつの間にか着ていた服は脱がされ、水分を絞って木の枝にうまく引っ掛けられていた。
代わりに大きめの古い毛布が身体に掛けられていて、ルイはそれでくるりと身体を包ませると周囲の情報を得ようとゆっくりと見回した。
(僕は一体……)
見回した景色の中に、見慣れない青年の姿が一つ。
逞しい褐色の剥き出しの上半身、風変わりの帽子に大きな石の耳飾りをしたその青年は健康的な笑顔をルイに向けた。
彼の服はルイの衣服と同様にそれは木の枝に干されているようであった。
「あなたは……」
ルイがぽかんとしている様子を見て、青年は察しよく言った。
「ああ、悪いっ! お前、昨日の嵐で海に投げ出されたの覚えてる?」
こくりと頷いたルイに、青年は笑顔のまま話を続けた。
「俺、リーベル号の乗り組み員でさ、お前を助けようとして海に飛び込んだはいいけど一緒に流されちまったんだよな」
昨晩の悪夢を思い出し、ルイは真っ青になった。
(へ、陛下……!)
身体に巻きつけた毛布が外れ落ちてしまうのも構わず、ルイは命の恩人かもしれない目の前の青年の肩を掴みかかった。
「僕と一緒に流された人いたでしょ!? その人はどうなりました!?」
「お、おいっ」
いきなり肩を掴みかかられて、青年は困ったように声をあげた。
「あっ……す、すいません」
とんでもないことをしてしまったと気付いて、慌ててルイは手を離した。
「残念だが、俺は流されたお前しか見てない」
ふらふらと立ち上がったルイは灰の瞳をこれ以上ない程見開き、そのまま近くの木の幹へともたれ掛かった。
「そ、そんな……」
ルイは自らの手の平を見つめた。百二十数年生きたというのに、まだ小さな少年の手だ。この手で確かに一度は主をしっかりと掴んだのに、その手を離してしまったのだ。
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