第3章 旅編

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  いつもは朗らかな笑みを浮かべているクリストフだったが、こんな緊張感高まる表情は見たことが無い。 「クリストフさん!?」   朱音が止めに入ったことで正気を取り戻したクリストフは、やっと男の首飾りから手を離した。 「……失礼」   痩せた男は慌てて首飾りを庇うと、クリストフから隠すように懐へそれをしまい込んだ。 「いくらですか?」    クリストフがベストのポケットから財布を取り出す。 意外なクリストフの行動に、朱音も思わず首を傾げた。 「二千ギアでどうです?」   余程高い値段だったのか、ピクリとクリストフの手が止まり、財布をぱたりと閉じてポケットへとしまい始める。 「待って待って! じゃあ千九百ギア!」   何事も無かったかのように歩き始めるクリストフに痩せ身の男が慌てて付き纏う。 「ああ! わかった! じゃあ思い切って千八百ギア!」   クリストフはしっしと男を遠ざける仕草をしても、男は諦めずついて歩く。 「じゃあ旦那、一体いくらならいいんだよ!」   男がそういうのを待ってましたとばかりに、クリストフはにこりと微笑み、 「千五百ギア」 と言った。 「そりゃいくらなんでも安すぎるぜ!? だって、こいつは本物の魔光石……っておい! 旦那!」   痩せ身の男が売り渋った瞬間、クリストフは朱音をつれたまますっと男がまるで空気にでもなったかのように隣をすり抜けて行った。 「ああ! もう! 畜生っ! 千五百ギアでのんでやる!」   男が地団太を踏んで叫んだのを聞くと、クリストフはくるりと向き直り、素早く財布から金を取り出すと男に笑顔でそれを握らせた。 「ありがとう、いい買い物ができましたよ」   男は泣く泣くそのネックレスをクリストフに手渡す。
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